行列、行列式の意味と定義、計算法もわかりやすく解説【線形代数】

行列、行列式とは何かというと

その始まりは、
連立方程式(1次連立方程式)の係数だけ集めて、注目したことがきっかけです。

2個の行列が続いているのは

掛け算 ( 積演算 ) の意味。
左側の行列は横に切り右側の行列は たてに読んで、かけて 足す 計算です。

数が1列(または1行)だけの行列とは ベクトル です。
ベクトルでやるように、行列で
定数倍 \(k\,\text{A}\) と言ったら、

 のように、計算するもののことです。
行列を一文字でおくときは、通常 大文字 A, B,\(\dotsm\) を使います。

(1次)連立方程式の解を求めるとき、最後 割らなければならない値 のことです。

2元連立方程式(係数は一般に \(a\,,\,b\,,\,c\,,\,d\))
の場合

次の2元 (1次 ) 連立方程式を 解いてみます。

$$\ \begin{cases} \,ax+by=u \\ \,cx+dy=v \end{cases}$$

いわゆる 加減法(消去法) 。片方の文字の係数を揃えて、引き算…

片方の文字 解 \(x\) が求まったら いつもは、代入しに行くのですが、今は係数がすべて文字。
計算が面倒という理由で、また最初の式に戻り、加減法で今度は \(x\) を消し、解を求めます。

\(x\) の分母に \(y\) も合わせるよう、異符号すなわち、分母分子に \(-1\) をかけます。
行列式とは、この分母、割る数。\(ad-bc\) のこと。
解は \((\,x\,,\,y\,)=\left( \dfrac{d\,u-b\,v}{ad-bc}\,,\,\dfrac{-c\,u+a\,v}{ad-bc}\, \right)\) .
\(x\,,y\) を たてに書き、定数項 \(u\,,v\) については1次式ですから、行列の書き方で、

と書くことができます。
この分母 割っている数、行列式。

の記号で表します。
これら記号の値が \(=ad-bc\) になるということです。
しかし、

行列式 の値がもしゼロだったら、連立方程式の解はどうなるか?

その場合、上のように解を計算することはできず、
連立方程式は解をもたないか、無数に解をもつか の
どちらかになります。

実際、\(ad-bc=0\) ということは、

つまり、「比がそろっている」状態を意味します。
例えば、

「比がそろっている」ので、正味
\(\ 2x+5y=7\) の式1個だけが条件ということです。
これですと、\(x\) を任意の値に決めて、\(y\) の1次方程式を解けば \(y\) の値が決まり、そうした値はすべて条件を満たすわけだから、すべてこの連立方程式の解。解は無数にあることになります。
図の意味で言うと、直線を表し、直線上のすべての点が解、ということです。

また例えば、

左辺の比はそろっていて、左辺の値全体が3倍です。しかし右辺の値は3倍でないようになっている、それは根本的に矛盾した条件。
どんな \(x\,,\,y\) の値をもってしても満たすことはできず、したがって解なしです。
図の意味では、平行な2直線。交わった所が解なのですが、これでは永久に交わることがありません。

まとめると次のようです:
連立方程式 \(\begin{pmatrix} a&b \\ c&d \end{pmatrix}\,\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} u \\ v \end{pmatrix} \) で

行列式 \(\Delta\,(=ad-bc)\,\neq\,0\)解はただ1組
 行列式 \(\Delta\,=\,0\) かつ
    左辺の比\(=\)右辺の比
解は無数
( 不定の解 )
 行列式 \(\Delta\,=\,0\) かつ
    左辺の比\(\neq\)右辺の比
解なし
( 不能の解 )

3次元の場合、行列式は? 連立の解は?

これまでは、2元連立方程式、行列は たてに数が2個、よこにも2個の、2×2(正方) 行列を扱ってきました。
次元 とも呼ばれます。
それでは文字がもう1個増えた、3元連立方程式では、
どうでしょうか?。3次元です。

係数を表すのに \(c\) 以降 \(d\,,\,e\,,\dotsm\) では文字が足りなくなるので、添字を使って表し始めます。

行列は 3×3(正方)行列です。行列式はどうなるでしょうか?。
3元連立方程式を解く解き方をやってみれば、求められます。
中学の応用問題で出てきた解き方を思い出してみましょう。

式と式を比べて、\(x\,,\,y\,,\,z\) のうち 一文字を完全に消去し、よく分かる 2元連立方程式に帰着させて、解くのでした。
この解法にならって、文字係数のまま 解いてみましょう。

他の2つの式のいずれとも比べるための1つめの式は、\(a_1\,\neq\,0\) としておきます。
係数そろえて 完全に消去したい文字は \(x\) とします。

「 \(a_1\) 」をかけた方が先に来るように、式全体にマイナスをかけて、

係数は 先ほど出てきた、2×2の行列式です。
結局、\(y\) と \(z\) は 2元連立方程式

になります。先ほどの 2元連立方程式の 解の公式で、
解 \(y\,,\,z\) は 表すことができます。

解の計算の最後に、この 青で囲んだ値 で割るのですが。

割る数だから これが行列式 か

とも思えますが、まだ分かりません。
今回は3元。3×3行列。より複雑です。計算を進めてみます。

「置換」が登場。符号、奇置換、偶置換 …

\( \ =(a_1\,b_2-a_2\,b_1)\,(a_1\,c_3-a_3\,c_1)\)
\( \qquad\qquad -(a_1\,b_3-a_3\,b_1)\,(a_1\,c_2-a_2\,c_1)\)

\(a_1\) がすべてにかかっているので、\(a_1\) でくくってみると、

カッコの中に注意すると、項が6個あります。
そして、\(a\,,\,b\,,\,c\) について 番号1, 2, 3 の すべての並べ方 が現れています。確かに
\(3\,!=6\)通り です。これら番号の並べ方を、

と表しましょう。青の矢印は 元々 書きませんが、そのように番号が対応する という意味です。
記号を使うと(よくシグマ( \(\sigma \) )を使います)この例は、
\( \sigma(1)=3\,,\,\sigma(2)=1\,,\,\sigma(3)=2\) のように関数で 言い表せて、置換 と呼ばれます。
形は行列みたいですが、行列とは意味が異なります。

次に、(再掲)

プラスになったりマイナスになったり、不思議なので
赤で書いておいたのですが、
この符号は どうやって変わるのかについて、見ていきましょう。(やはり「 \( a\,,\,b\,,\,c\) 」よりも「 1, 2, 3」( 番号 )で本当は見るべきです。)
上のカッコ内の6項のうち 次の2項を例えば 比べると、

2つの番号だけ並べ替える ( 互換と呼びます )と、符号が変わると分かります。
互換のイメージは、あみだくじの 横断する線 ( この図では たての線。通常と異なりこの図では、あみだくじを横向きに描いています ) です。
次にまた互換を行う、つまり2回目の互換を行うと、また符号が変わるから、最初の符号。プラス に戻ります。
実は置換(並べ替え) はすべて、そうやって 互換を繰り返し行って得られるもので、符号はその度に反転する、ということなのです。
置換には \(3!=6\)通り ありました。そのすべて。互換0回 から数え始めます。

初め \(\begin{pmatrix} 1&2&3 \\ 1&2&3 \end{pmatrix}\) 。まったく入れ換えてない状態から、互換を1回、3回、5回行なってできた置換は、奇数回マイナスをかけた「マイナスの」置換で、奇置換と呼ばれます。
その反対に、互換を0回、2回、… 偶数回マイナスをかけた「プラスの」置換。偶置換と呼ばれます。
このプラス/マイナスを、その置換 \(\sigma\) の符号と呼び、\(\text{sgn}\,(\sigma )\) と書くことがあります。
それぞれの置換を見て その符号がどちらになるかは、瞬時に判定できなくて構いません。

それでは、3×3行列の行列式とは?

結局、解 \(y\,,\,z\) を求めようとして、分母 つまり 割る数 となる

\( = a_1\,(\ a_1\,b_2\,c_3-a_2\,b_1\,c_3+a_3\,b_1\,c_2\)
\( \qquad -a_3\,b_2\,c_1+a_2\,b_3\,c_1-a_1\,b_3\,c_2\ ) \)
となります。\(a_1 \) でくくれるのでした。
カッコの中は、置換の考え方で見ると見やすくなる 形の式ですね。
一方、解 例えば \(y\) の方は、

複雑ですが、よく見ると、分母の \(b\) が \(e\) に置き換わったものが、分子です。だから、計算した後の式も、分母の \(b\) を \(e\) に置き換えて

そうすると \(a_1\) で約分することができるので、解 \(y\) の式が簡単になって、

これが真に 割る数。行列式だと、確定できたことになります。
したがって次のように定義します:

右辺は\(a\,,b\,,c\)、1, 2, 3 について対称性があって、3×3行列についての式だといえます。
すべての置換を わたる、符号をつけた各項の和、とも言い表せます。
det や \(\Delta\,,\,\delta\) という記号も 使えます。

3×3つまり3次元の 行列式となると、だいぶ複雑で、工夫なしに覚えるのは困難です。
( 後でまとめますので、ここまではノートも取らなくて 大丈夫です。)

たて一列々々、ベクトルのかたまり として考え、

3×3行列の行列式も ゼロになる場合はあります。しかし暫くは \(\neq 0\) であるとして、3元連立の解の公式の導出を続けましょう。
3×3の行列式で表せば、解\(y\,,\,z\)の式は 簡潔になります。

\(y=\dfrac{|\,\mathbf{a}\,\mathbf{e}\,\mathbf{c}\,|}{|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|}\ ,\ z=\dfrac{|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{e}\,|}{|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|}\ .\)
先ほど、\(y\)の分子は \(b\) を \(e\) でおきかえればよいと、
同様に \(z\)の分子は、\(c\) を \(e\) でおきかえたものだと、分かっていたので、そうなります。

そして3元連立の解。残り、\(x\) も求めなければなりません。
何となく、\(y\)の分子が \(b\) を \(e\) で、\(z\)の分子が \(c\) を \(e\) でおきかえたものだから、\(x\)の分子は \(a\) を \(e\) でおきかえたもので、
\(x=\dfrac{|\,\mathbf{e}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|}{|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|} \) ではないかと予想されます。
実はそれで正しいのですが、それを確かめるためにまず、

行列式の性質 交代性 について

みていきましょう。
交代性とは、行列のたて1列と他のたて1列を並べ替えると、その行列式の値はマイナスがかかった異符号になる、という性質です。(横1列(1行) どうしでも成り立ちます。)

なぜそのような性質が成り立つかというと、行列の1列と他の1列を並べ替える操作は、行列式の各項に一斉に互換を施す意味と、同じことになるからです。

それでは 3元連立の残りの解 \(x\) を。

\(y\,,\,z\) が分かっているから代入する、という方法ではかえって計算が大変になるので、最初から解き直してみます。
\(x\) を消去する代わりに 今度は、 \(y\) を消去します。見やすくするため、\(y\) の項を最も左に配置します。

係数も左の2列が 並べ替わります。最初3元連立を解いたとき \(a_1\) を他の式のそれぞれの係数にかけて \(x\) を消去したように、今度は \(b_1\) を他の式のそれぞれの係数にかけて \(y\) を消去していきます。

そこでは \(b_1\neq 0\) を仮定しなければなりません。もし最初の第1式 \(b_1 y+a_1 x+c_1 z=0\) の \(b_1\) が0だったら、他の、\(b_k\neq 0\) を満たす第k式を 代わりに第1式に上げなければならず、その場合はさらに行列の 行と行の並べ替えを行う必要があるでしょう。

しかしそうした操作を行なったとしても、
係数の行列式は、初めの行列式 \( \begin{vmatrix} a_1&b_1&c_1 \\ \ a_2&b_2&c_2 \\ \ a_3&b_3&c_3 \end{vmatrix} \) に
\(\pm 1\)をかけたものにしか、せいぜい なりません。

あとは最初の解き方としくみはまったく同じなので、
最初の解き方で出た解の公式を、\(a\) を \(b\) , \(b\) を \(a\) ,
\(x\) を \(y\) , \(y\) を \(x\) に 読み替えれば、今 得られる解 のはずです。

\(x=\dfrac{|\,\mathbf{b}\,\mathbf{e}\,\mathbf{c}\,|}{|\,\mathbf{b}\,\mathbf{a}\,\mathbf{c}\,|}\ \ ,\ \ z=\dfrac{|\,\mathbf{b}\,\mathbf{a}\,\mathbf{e}\,|}{|\,\mathbf{b}\,\mathbf{a}\,\mathbf{c}\,|}\ \ \ .\)

これに交代性を使います。初めは \(z\) から。

\( z=\dfrac{|\,\mathbf{b}\,\mathbf{a}\,\mathbf{e}\,|}{|\,\mathbf{b}\,\mathbf{a}\,\mathbf{c}\,|}=\dfrac{-|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{e}\,|}{-|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|} \)
  \( =\dfrac{|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{e}\,|}{|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|} \)
となり、最初出した答えと一致すると確認できました。
ではいよいよ \(x\) です。とはいえ今の計算とまったく同様で難しくありません。

\( x=\dfrac{|\,\mathbf{b}\,\mathbf{e}\,\mathbf{c}\,|}{|\,\mathbf{b}\,\mathbf{a}\,\mathbf{c}\,|}=\dfrac{-|\,\mathbf{e}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|}{-|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|} \)
  \( =\dfrac{|\,\mathbf{e}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|}{|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|}\ . \)

これで、3元連立方程式の解の公式が、得られました。
\( x=\dfrac{|\,\mathbf{e}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|}{|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|}\,,\,y=\dfrac{|\,\mathbf{a}\,\mathbf{e}\,\mathbf{c}\,|}{|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|}\,,\,z=\dfrac{|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{e}\,|}{|\,\mathbf{a}\,\mathbf{b}\,\mathbf{c}\,|}\ . \)
( \( |\,\mathbf{a}\ \mathbf{b}\ \mathbf{c}\,| \) は、3次正方行列の行列式(\(\neq 0\)) 。)

では次元を一般の \(n\) 次元にして、\(n\) 元一次連立方程式だったら⁉ー
それを考えるためには、a , b , c ,\(\dotsm\) とやっていくと文字が足りなくなりますので、a , b , c ,\(\dotsm\) の代わりに \(\mathbf{a}_1\,,\,\mathbf{a}_2\,,\,\mathbf{a}_3\,,\,\dotsm\) と言っていくことにします。
すると行列の各要素 (成分) の添字は、縦も横も番号を使うことになるから、
「 \(a_{2\,\!3}\) 」 のような、二重添字になります。
二重添字の言い方で、これまで得られた公式を以下に、まとめます:

まとめ:行列とは? 2元・3元の行列式の定義、性質と計算法

  • 行列
    行列とは、たて・横に、数を並べたもの。たてと横の個数が同じ場合 正方行列 と呼ばれます。
    「行列」の名の通り、「行」,「列」の順に 成分の位置を表します。
  • 行列の演算 (定数倍・和差)
     \( \text{A}=(\,a_{ij}\,)\,,\,\text{B}=(\,b_{ij}\,)\) について、
      \(\alpha\text{A}+\beta\,\text{B}\,:=(\,\alpha\,a_{ij}+\beta\,b_{ij}\,)\) .
     AとBの演算では、AとBの行列のサイズが等しくなければなりません。
     要するに、各成分について 演算します。
     
  • 行列の演算 (積)
    \( \text{A}=(\,a_{ij}\,)\,,\,\text{B}=(\,b_{ij}\,)\) について、
     A, B で表せば \(\text{A}\,\text{B}\) という、掛け算 (積演算) 。
    具体的な計算は以下のようですが、計算が定義できるためには必ず、
     Aの列の数 (横の個数) と、Bの行の数 (たての個数)が、等しい。
    一致していなければなりません。

  演算の結果の行列 C は、\(n\times m\) 行列になります。

  • 2元( 2×2行列 )の行列式
    「 \(a_{ij}\) 」(二重添字) の表記で やはり見ます。
  • 3元( 3×3行列 )の行列式の定義
    先ほどは具体的にも書き出しましたが、次の定義をもとにしましょう。
  • 置換
  • 3元( 3×3行列 )の行列式の計算法
    具体的に書き出した式のほうでは、
    次のように把握すれば憶えられます。
    【 関-サラスの計算法 】:
  • 行列の ベクトル記法について
  • 行列式の性質
    (1) 交代性
    (2) 多重線形性

最初のコメントをしよう

必須